<2026年度学会賞(書籍の部)>
・受賞者名:古沢昌之先生(関西学院大学)
・受賞作:『詳説 国際人的資源管理―多国籍企業の人材マネジメントの理論的・実証的研究―』(全525ページ)
・出版社:文眞堂
・刊行年:2026年
・受賞理由(堀口朋亨・グローバル人材マネジメント学会学会賞委員長)
本書は、多国籍企業が直面する「現地適応」と「グローバル統合」を「二者択一」の視点で捉えることなく、その「両立」こそが競争優位に資するのではないかという大きな問いを前提に議論を進めている。国際人的資源管理の枠組みでは、従業員の採用・配置・評価・育成といった「国際人的資源管理の機能」に関して、多国籍企業が活動する立地から「本国人」「現地人」「第三国籍人」の分類が用いられてきたが、このようなシンプルな分類では実態を明らかにできないことを明示している。本書の特徴としては、先行研究に対して充分な検討を加えた後に、企業の政策評価を行っている点にある。評価は、日本企業では、日立製作所、サントリーホールディングス、三井化学、参天製薬、堀場製作所、ダイキン工業など、欧米企業では、ファイザー、アクセンチュア、3M、GEヘルスケア、テキサス・インスルツメンツ、ネスレ、SAP、イケアなどで行われている。それを受けて、実証研究の設計を行い、量的・質的研究を複合的に実施し、特に質的研究においては、「修正版グラウンデット・セオリー・アプローチ」を採用することで、厳密性を一段高いものとしている。研究目的を達成するための学問的な手順の厳格性・厳密性が非常に高いと評価した。
<研究奨励賞(論文の部)>
・受賞者名:福嶋美佐子先生(筑波大学)
・受賞作:“From tourist phobia to xenophobia: How tourism discourses shape
foreigners’ policy in Japan”
・掲載誌:Journal of Global Tourism Research, 10(2):139-152.
・刊行年:2025年
・受賞理由(堀口朋亨・グローバル人材マネジメント学会学会賞委員長)
本論文は、広義のグローバル人材マネジメントに関わる、内なる国際化の基盤となるインバウンド事象を研究対象としている。具体的には、オーバーツーリズムに起因する社会的摩擦(観光客恐怖症)が、長期滞在外国人への排斥言説(外国人嫌悪)へと変容し、新ナショナリズムの政治的資源として機能するメカニズムを明らかにしている。課題設定では、観光客へのミクロな日常の不満がいかにマクロな国家的ナラティブへ吸収・変換されるかを問い、従来の観光研究と移民研究を横断的に統合する独自の高次元な視座を提示した。研究方法は、新聞報道の定量分析と選挙公約・結果の定性的・定量的分析を組み合わせた混合手法は極めて実証的なものである。特に、オーバーツーリズム報道の急増から約2年後に「外国人政策」の報道が急増するという時間的ずれをデータで可視化した点は、日常の感情が排外主義へ「他者化」していくプロセスを論理的かつ明快に裏付けており、説得力が非常に高いと評価した。
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